【ミニチュア展×百段階段】作品だけでなく、展示会場もすごかった。

ミニチュア展が雅叙園で開催されるとのこと。正直なところ、ミニチュア作品よりも展示会場そのものに見入ってしまいました(笑)。作品以上に、展示会場が印象に残るのは自分でも驚き。今回のミニチュア展で感じたことをまとめていきます!
目次
- 展示会場がよかった。特に螺鈿(らでん)。
- 「アイデアがすごい!」となった作品。
- お土産屋で感じた「工芸品の価値」
1. 展示会場がよかった。特に螺鈿。
展示会場は「百段階段」。目黒にあるホテル雅叙園の中にある建造物です。6つほどの展示室が階段でつながっている構造になっています。段数は九十九段。百段じゃないんかい。あと、当時からある木造の建物なので、とても寒かったです。
天井画の迫力
まず驚いたのが 天井画。

この百段階段では意識せざるを得ないほど天井に作品がぎっしり。細部まで描き込まれた絵が空間を包み込み、圧倒的な迫力。初めてじっくりと天井画を見ました。意外と天井との距離が近くて細部まで見やすかったです。西洋美術だと、天井画は高い場所にあるイメージです。システィーナ礼拝堂とか。

あとは思わず魅いってしまったのが、歴史の部分。天井に絵を飾ろうとした経緯が記載されていました。

歴史をまとめるとこんな感じです!
・もともと料亭だった。(上流階級の文化だった)
・料亭を大衆も楽しめるようにしたかった。
・天井が高い方が気分良く食事できる。
→天井高いとスペースあまるから、絵をいれちゃえ!って発想らしいです。
螺鈿の美しさ
次に感動したのが 螺鈿(らでん)。らでんとは、「貝を薄く削り、装飾として貼り付けたもの」です。独特な輝きを放ちます。会場へ向かう油圧式エレベーターの装飾にも螺鈿が使われてました。意外なところでこんにちは。

さらに、展示室にも螺鈿が施された装飾がありました。あちらこちらに螺鈿パラダイス。特に印象的だったのは 経年変化した螺鈿。これまでピカピカと輝く螺鈿ばかり見てきました。時間が経って少しくすんだり、一部剥がれたりしているものを見たことがありませんでした。これはこれで味があります。独特な輝きは色あせてませんでした。

2. 「アイデアがすごい!」となった作品。
ミニチュア作品の中で印象に残った以下2つの作品。
① 島木英文さんの作品
島木さんの作品は、 箱の中に「建物の内側」を作る というもの。外から見るとシンプルな箱。だけど、正面から覗くと奥行きのある和風建築が広がっている。

他の作品は「細かさ」や「緻密さ」を感じるものが多かった。しかし、島木さんの作品は 余白 や 光の入り方が計算されていました。ミニチュアならではの、ちまちました感じがないのが良かったです。
ゆとりさを感じました。何でしょうね。単純に日本人だから和風建築がいいと感じるだけなのでしょうか(笑)あとは、鑑賞者に箱の中を覗き込んでもらうような構成がいいなと思いました。多くの鑑賞者は自分が思う以上に、全然作品を細部までみていないとのでそこがいいと感じました。
② mondeさんの「路地裏BOOKSHELF」
mondeさんの作品は 本棚の一部をミニチュア化したもの です。最初、展示部屋についた時は「作品がない!本があるだけじゃん!」と思っていました。でも、よく見ると本と本の中に町並みがある!

本の形をした枠の中に、小さなお店がぎっしり並んでます。細い路地のような奥行き感が表現されています。まさかそこに作品があるとは!と一人で感心に浸っていると、一緒にいた友人がこの作品「鏡使われてるよ」と一言。
いやいやまさか。鏡を使っていたら、覗き込んだ自分の顔が映るはずじゃないか!あれ、でも、おかしい。仮に奥行きが本当に作りこまれているなら、本棚に収まっていない。よく見ると 斜めに写真を配置することで奥行きを演出 している!
それに気づいた時、細部の作り込みの巧妙さに改めて驚かされました。しかも、路地にあるお店の看板とかは表と裏で違うデザイン。
だから、鏡からは裏側が映し出され別の看板に見えていました!うーん。最初のインパクトに引っ張られていて、細部のこだわりを見逃していたところでした(笑)
3. お土産屋さんで感じた「工芸品の価値」
相変わらず、お土産コーナーでも螺鈿細工の小物を見てみました。66,000円の螺鈿の小箱、螺鈿の箸が2,200円がありました。
装飾の違い。作品の違い。などがありますが、私が気になったのは製作者の名前の有無です。
小箱の方には名前が入っています。
螺鈿師と呼ばれる人が作ったものだと、その人の名前が記載されるようですね。(螺鈿師も伝統工芸士なので、一定の技術が認められている方々です。)
なぜ、私はそこに気になったのか。思い当たる出来事が二つありました。
1つ目は、民芸品と工芸品の違いについてなんだろうって考えたことです。
20
25年にポケモン工芸展がありました。ポケモン×工芸品でコラボっていたものです。
その時、工芸品ってなんぞやって調べたときに、日常品で使われるもの。その中でも、美術的価値があるものとされていました。
似たような言葉が民芸品です。こちらも日常で使われるものに変わりはありません。ただ、一般的に美術的価値があるとはされない認識のようです。
このような価値の違いについて、伝統的な技術が使われているかどうか。もっというと、伝統的な技術を扱う伝統工芸士が作品を作っているかが違いとしてあるらしいです。
2つ目は、民藝運動というものについて知ったタイミングであったということです。
民藝運動とは本当にざっくりと、柳宗悦さんが、美術品じゃないけどさ日用品ってよくね?っていう運動です。
自分なりにいいと思ったものをよいと主張する精神が感じられ、もっと詳しく民芸運動を知りたいなという好奇心がありました。
普段日常的に使うものはただの道具ではない。
それ以上のものであるとと感じる人がいるくらいだから、何かあるかもしれない。
日用品に対して、美のセンサーを張り巡らせていたタイミングでした。
脱線してしまいましたね。話を少し戻します。螺鈿のお土産を見たときにこんな想像をしました。
仮に素人から見て全く同じに見える螺鈿の箱で一方に螺鈿師の名前。もう一方は名前がない。なのに値段が違う。
螺鈿師の名前がわかるようになっている方が高い。といった場合、自分はどちらを買うかと。
私は見た目が変わらないのなら、螺鈿師の名前がわからない方を買うと思います。見た目以上の価値の違いは私にはわからないからです。
ただ、少し視点を変えればこんなことも思います。少し値段は高いけど、螺鈿師の名前が入った作品を買うということは、「作品の価値」だけでなく「職人というブランドへの投資」 という視点もあるのかなと。
伝統工芸士が持つ技術や感性を未来に残すために、お金を払う。そう考えると、彼らの作品を買うことはただの買い物ではなく文化や技術を支える行為につながるのかもしれないかもと。
民芸品、工芸品の価値をどのようにとらえるのか、そこの視点もいろいろありそうで面白いなと多みました。
まとめ
・ 百段階段の天井画や螺鈿の美しさ
・ ミニチュア作品の「奥行きの演出」や「見せ方」の工夫
・民芸品・工芸品の価値を考えたこと
が印象に残りました。